日別アーカイブ: 2011年4月7日

観音寺桜

山腹を棚引く雲のように白く、桜並木が登っていた。

佐久市望月地区印内の集落のはずれ、県道を脇にそれると道は鹿曲川へと下った。太古の昔、蓼科山塊から押し出した土石泥流の末端部にあたるというその集落は、東西を川に仕切られた台地の頂にある。観音寺の集落をめざす幅3㍍ほどの林道だ。

今でこそ周辺の道路整備が進み、辺境の面影はないものの、かつては、バス停がある印内までのこの道が村をつなぐ生命線だった。近くの畑でトラクターを駆っていた○○さん(70・印内)が 「新しい林道を作った際に、記念に移植した桜だよ」と、並木の由来を教えてくれた。桜は、五、六十年前の旧本牧町の時代に植えたものだった。他の新道ができた今ではほとんど通う人もいない山の道だ。

 観音寺集落のいたるところに屋根に煙突を乗せたロッジ風の真新しい住宅が目立つようになった。滞在型農園「クラインガルデン」といった貸別荘のような施設(年間家賃39万円)もできた。20棟で現在246組が入居待ちなのだとか。「15年先まで既に予約済みということになります」と管理人が言っていた。新幹線佐久駅まで車で30分程度で通える農の村が、都会のリタイア組を呼び込みつ・・・・過疎に歯止めを、ということらしい。